以前、Intel N100端末にProxmox VEをインストールして、Skylake世代のXeon E3-1225 v5とのパフォーマンス比較を行いました。
Unixbenchを走らせた結果として、1 parallel copyの結果がXeon E3-1225 v5比で約202.3%、4 parallel copyの結果が約172.2%とXeon E3-1225 v5を遙か彼方に突き放し、そのコストパフォーマンスの高さが光ったIntel N100。
その際にTDP差については触れていましたが、実際の消費電力測定値については触れられていませんでした。
今回、Xeon E3-1225 v5が搭載されたHP Z240を大阪から配送できたので、ラトックシステム Bluetooth ワットチェッカー RS-BTWATTCH2Aを使って消費電力比較を行いました。
テスト環境
今回は、HP Z240にインストールしていたvSphere ESXi 8.0.4で動かしていたVMを、Beelink S12 ProにインストールしたProxmox VE 8.1に移行し、全VMが稼働している状態での消費電力を2分間計測して比較します。
なお、公平性を保つためHP Z240、Intel N100ともに搭載するメモリは32GBで、どちらもNVMe SSD 500GBの物を利用しています。
また、vSphere ESXi 8.0.4からProxmox VE 8.1へのVM移行は下記記事の手順で実施しています。
AOOSTAR R1 N100については、3.5インチHDDは取り外した状態でテストしています。
動作しているVMは以下の通りです。
VM名 | OS | vCPU | RAM | Storage |
ws22-01 | Windows Server 2022 Standard | 2 Core | 8GB | 80GB |
ws22-02 | Windows Server 2022 Standard | 2 Core | 8GB | 80GB |
win11 | Windows 11 23H2 | 2 Core | 4GB | 96GB |
debian12 | Debian 12.4 | 1 Core | 2GB | 16GB |
計測結果
さて、上記のテストシナリオで消費電力を計測した結果は以下の通りとなりました。
CPU | 消費電力平均(2分間) |
Intel N100 | 9.4W |
Xeon E3-1225 v5 | 50.6W |
結果として、Intel N100環境の消費電力は、Xeon E3-1225 v5環境の約18.6%と非常に大きな差が得られました。
上記記事のUnixbenchのスコアをそれぞれ平均消費電力で割った値を、ワットパフォーマンス(消費電力1Wあたりの性能)スコアと定義して比較を行います。
CPU | Unixbench x1(※1) | Unixbench x4(※2) | ワットパフォーマンス Unixbench x1(※1) | ワットパフォーマンス Unixbench x4(※2) |
Intel N100 | 2354.0ポイント | 6406.3ポイント | 250.4ポイント | 681.5ポイント |
Xeon E3-1225 v5 | 1163.7ポイント | 3720.7ポイント | 23.0ポイント | 73.5ポイント |
※1 Unixbench 1 parallel copyの略
※2 Unixbench 4 parallel copiesの略
結果としては、Intel N100の消費電力が非常に低いことから、Xeon E3-1225 v5と比較して、Unixbench 1xのワットパフォーマンススコアが約10.9倍、Unixbench 4xのワットパフォーマンススコアが約9.3倍となりました。
このことからIntel N100はワットパフォーマンスが非常に優秀なCPUと言えますね。
月々の電気代の差は?
ワットパフォーマンスの比較を実施してみましたが、今回テストしたIntel N100とXeon E3-1225 v5のPCをそれぞれ24時間動かすと、月の電気代はどれくらい差が出るのか見てみましょう。
電気代を計算するには電力量「消費電力(W)×時間(h)」を計算した上で、各電力会社の料金単価を元に計算します。
1ヶ月を31日として、それぞれの環境の電力量は以下の通りです。
※各電力会社の料金単価は1kWh単位での計算となります。
※電気代は小数点第二位を四捨五入しています
■Intel N100
1日あたりの電力量:9.4 (W) × 24 (時間)=225.6 (Wh) ÷ 1000 ≓ 0.23 (kWh)
1ヶ月の電力量:7.13 (kWh)
■Xeon E3-1225 v5
1日あたりの電力量:50.6 (W) × 24 (時間) = 1,214,4 (Wh) ÷ 1000 ≓ 1.21 (kWh)
1ヶ月あたりの電力量:37.51 (kWh)
今回は、2024年2月12日段階の東京電力のスタンダードSプランを元に比較してみます。
CPU | 第一段階料金の場合 | 第二段階料金の場合 | 第三段階料金の場合 |
Intel N100 | 30.00円×7.13=213.9円 | 36.60円×7.13=261円 | 40.69円×7.13=290.1円 |
Xeon E3-1225 v5 | 30.00円×37.51=1,125.3円 | 36.60円×37.51=1,372.9円 | 40.69円×37.51=1,526.3円 |
こうして比較してみると、Xeon E3-1225 v5の1ヶ月の電気代はIntel N100の約5.3倍に。
Intel N100はほぼ自販機で売っている缶コーヒー2本分の値段で済みますが、Xeon E3-1225 v5は10本くらいの価格に・・・
自宅サーバをワットパフォーマンスの高いIntel N100に買い換えてみては
実際にかかる電気代を比較してみると、なかなかインパクトのある価格差となりました。
自宅サーバというと、ちょうどXeon E3-1225 v5のようなSkylake世代の中古PCやワークステーションを買ってきて動かしていたのが主流かと思います。
Intel N100を搭載したミニPCは中古PCと比べて、PCI-eカードが使えないなど拡張性に難がある物の、vSphere ESXiが無料で使えなくなった今の状況だと、Proxmox VEを入れて各PCにSSDとメモリをそれなりに追加した物の代数を増やす方向でも問題ないかなと思います。
さらに、Intel N100を搭載したミニPCであれば、PCの置き場も非常にコンパクトで済むので、ワットパフォーマンスだけでなく、自宅サーバ置き場の省スペース化にも大きく貢献してくれます。
実際僕も自宅サーバとして、Proxmox VEを入れたIntel N100ミニPCを大活用しています。
Celeron N5095が主流の頃は、少しスペックが足りないな・・・という場面によく遭遇しましたが、Intel N100はSkylake世代のXeon E3位のパフォーマンスを軽々と叩きだし、かつ超省電力なので個人的には革命的なCPUだなぁと改めて思いました。
もし、自宅サーバをSkylake~KabyLake世代の中古PCで組まれている場合は、これを機会にIntel N100ミニPCへリプレイスすることを検討してみてはいかがでしょうか。