「小さなおうちDC環境を目指して」という連載記事をはじめるにきっかけになった、Intel N100プロセッサを搭載した格安PC、「AOOSTAR R1 N100」についてまず触れていきたいと思います。
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この端末は、Intel N100プロセッサを採用し、DDR4-SODIMM 16GB、512GB NVMeストレージを搭載しており、通常3万円台で販売されています。
Amazonのタイムセールなどを狙えば、3万円を切ることもあり、非常にコストパフォーマンスの高い端末となっています。
この記事では、まずはファーストインプレッションを触れた後、最後にIntel N100のパフォーマンスについて見ていきます。
目次
はじめに
3.5インチHDDを2台搭載できる、いわゆるNAS型筐体です。
筐体自体は完全にプラスチックで、価格相応の仕上がりですが、サーバ用として使うので、特に気にすることもないのかなという印象です。
3.5インチHDDを2台、NVMe SSDを1台搭載できる拡張性の高さに注目
本体の内部アクセスは非常に簡単で、本体底面にあるプラスねじを外し、カバーをそっと持ち上げることで中にアクセスできます。
DDR4-SODIMMと、M.2スロット(NVMe SSD)がそれぞれ1スロットずつ搭載されており、簡単にユーザ自身で交換できるようになっています。
NVMeの他に、3.5インチSATA HDDも搭載可能なので、Proxmox VEクラスタとしては十分なストレージ領域を確保できます。
+ドライバー1本でサクッとバラせるのは楽で良いですね。
32GBメモリも認識可能
Intel N100の仕様表からは、サポートされる最大メモリサイズは16GBと記載がありましたが、32GBメモリも何の問題なく認識してくれるので、サーバ用途としても安心です。
動作確認したDDR4-3200 SODIMM 32GBモジュールは以下の2つです。
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AOOSTAR R1 N100にはWi-Fiカードが搭載されていますが、技適に通っていないため電源を入れる前に取り外すようにしましょう。
Intel N100のスペック
さくっと本体の全景について触れたので、今度は結構気になるパフォーマンスをチェックしていこうと思うのですが、その前にIntel N100について少し確認してみます。
CPUは冒頭で話していたIntel N100。Intel N100の基本的なスペックは以下の通り。
項目 | 値 |
---|---|
コア数 | 4コア |
スレッド数 | 4スレッド |
ターボブースト利用時の最大周波数 | 3.40GHz |
TDP | 6W |
最大メモリーサイズ | 16GB |
Intelの第12世代以降のCPUは高性能コアのPコアと、高効率コアのEコアを組み合わせた物になっています。
今回取り上げているIntel N100は全てのコアがEコアとなっており、例え4コアの最大周波数3.40GHzだったとしても、性能的に少し不安が残るところ。
Intel N100と他CPUとの比較
NVMe SSDをソリダイムのP41 Plus 512GBに交換し、SATA SSDにMX500の500GBを接続してOSを再インストールした状態で、各パフォーマンスを確認していきます。
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Cinebench R23
手元のThinkPad X13 Gen2 AMD(Ryzen 5 PRO 5650U)を比較対象としてCinebench R23と比較した結果がこちら。
Multi性能については、Intel N100は4コア4スレッドで、Ryzen 5 PRO 5650Uが6コア12スレッドなので差が開くのは当然なのですが、Ryzen比約50.7%のスコアを叩き出していることに結構驚きです。
Single性能については、Ryzen 5 PRO 5650Uに僅かながら劣る物の、非常によく頑張っている印象を受けます。
Pコアと比べると、Eコアは大したことないんでしょ、と思いがちですがEコアもかなり優秀。
ドラゴンクエストⅩベンチマーク
基本的にサーバ用途なので、ゲーム利用は想定していないのですが、念のためドラゴンクエストⅩベンチマークを試してみました。
Intel N100の統合グラフィックスはIntel UHD Graphicsで、最大動的周波数は750MHzの実行ユニットが24と本当に必要最低限なスペックなので、ドラゴンクエストⅩベンチマークでも「やや重い」判定。
それでも最下位モデルながらも結構頑張っている印象ですね。
Unixbench
続いてはProxmox VE 7.4環境で下記CPUを搭載したサーバを用意し、それぞれUnixbenchを走らせた結果です。
- Intel N100
- Xeon E3-1225 v5
- Core i3-13100
Core i3-13100はあくまで参考程度に出した値なので(4コア8スレッドなので)、大きな差が出る事は最初から分かっていました。
ただ、それでも全てPコアで8スレッドなCore i3-13100と比較して、1 parallel copyのテスト結果がCore i3-13100比で約61.5%で4/8 parallel copyでは約39.7%と、全てがEコアで構成されている割にかなり奮闘できていることが分かります。
少し前のXeon E3を楽々蹴散らすIntel N100
問題はXeon E3-1225 v5との比較です。
1 parallel copyの結果がXeon E3-1225 v5比で約202.3%、4 parallel copyの結果が約172.2%とXeon E3-1225 v5を遙か彼方に突き放しています。
Xeon E3-1225 v5はSkylake世代のXeonで、自宅でサーバを構築される方であれば中古でよく購入する対象となるかと思います。
ただ、TDP 9Wでマシン込みで3万円と少しで購入できるIntel N100にここまで大差が付くと、中古のサーバ機を長く保持するのではなく、Intel N100端末に早々に置き換えた方が良いのでは・・・と感じるくらい強烈な結果となりました。
消費電力の低さと、効率の高さ
別記事でも触れていますが、Intel N100はXeon E3-1225 v5にパフォーマンスだけでなく、消費電力においても圧倒的な差を叩き出しています。
以下の表は、Intel N100を搭載したPCとXeon E3-1225 v5を1ヶ月間稼働させた際の電気代の差をまとめた表です。
電力量の出し方や、電気代を算出する際の詳しい条件は「Intel N100とXeon E3-1225 v5との消費電力を比較してみた」記事をご覧下さい。
CPU | 第一段階料金の場合 | 第二段階料金の場合 | 第三段階料金の場合 |
Intel N100 | 30.00円×7.13=213.9円 | 36.60円×7.13=261円 | 40.69円×7.13=290.1円 |
Xeon E3-1225 v5 | 30.00円×37.51=1,125.3円 | 36.60円×37.51=1,372.9円 | 40.69円×37.51=1,526.3円 |
見ても分かるとおり、Intel N100マシンを1ヶ月稼働させたとしても、月々約290円に抑えながら、Xeon E3-1225 v5よりはるかに高いパフォーマンスを発揮します。
本体代金の安さもさることながら、ランニングコストの観点からも自宅用サーバとして、Intel N100は非常に優秀であることが分かります。
自宅サーバとしての使用例
価格も安くて、ランニングコストも小さいIntel N100マシンの使用例としては主に下記が挙げられます。
- Proxmox VEをインストールして、仮想サーバとして運用
- vSphere ESXiの代替サーバとして利用
- Proxmox VEクラスタの構築
- サーバやLinuxの学習用として利用
- AOOSTAR R1 N100に、OpenMediaVaultをインストールしてファイルサーバとして運用
- Raspberry Piが高価になってきたので、ラズパイ代わりに利用
- お子さんの初めてのPCとして利用
ぱっと思いつく使用例はこれくらいでしょうか。
実際、僕の家ではProxmox VEをインストールした、「TRIGKEY Green G4」を複数台用意して、クラスタ環境を構築したり、本記事で触れたAOOSTAR R1 N100に、OpenMediaVaultをインストールしてファイルサーバとして運用しています。
本体自体のコストが非常に安いので、万が一故障したとしても財布にあまりダメージが無いところも良いポイントですね。
まとめ
Intel N100については、僕個人としてもそこまでパフォーマンスは出ないんじゃないかな、と思っていただけに今回の結果はビックリ。
おうちDC用途であれば、スペックとしては十分ですし、何より本体代も安いしワットパフォーマンスが非常に高いので電気代も、従来のサーバ機や普通のPCと比べると安く付きそうなのが高ポイントです。
AOOSTAR R1 N100をはじめ、TRIGKEY Green G4のようにIntel N100を搭載した小型PCは、コストパフォーマンスに優れた自宅サーバを探している方に取って理想的な選択肢です。
自宅サーバ機が老朽化を迎えている方、昨今の電気代の高さにお困りの方は、ぜひ今すぐ購入してみてください!